ベトナム人エンジニアの活用 成功と失敗事例

 「ベトナム人の人はタコ部屋のような所に住むのでしょ」
 「給料は最低賃金でしょ」

いいえ、そんな感覚はもう古いのです。
ベトナム人エンジニアを活用するには、日本人と同等の待遇が必要です。成功事例も多いが、失敗事例も少なくありません。
成功のカギは就労・生活環境の整備です。

ベトナム人エンジニアの雇用について、まず成功例を見ていきましょう。

①岐阜県の金属加工業A社

A社では、現地学校の機械科を卒業したベトナム人新人に、社内教育をしっかり行ったことにより、3年でCNC旋盤を自らプログラミングできるまでになり、職場では貴重な存在に成長しました。
日本語も苦労してN3を取得し、N2を目指して勉強中です。

②愛知県の電動工具・自動車部品製造業B社

B社は社員の30%がベトナム人という製造業で、社内はベトナム語表記に力を入れ、ベトナム語の就業規則や一時帰国規定、寮使用規定などもあります。社内掲示や安全用語もベトナム語。
ベトナム人が生活しやすい環境づくりに力を入れ、彼らに土地を貸し、野菜の栽培などを自由にやらせています。
日本人社員も一緒に行くレジャー企画を社長自ら立て、実施しています。

こうした取り組みのおかげで経営も順調で、ベトナム南部に工場進出も果たしました。

③愛知県の食料品加工・外食産業C社

C社は、日本語の堪能なベトナム人女性を正社員で迎え、加工工場に勤務するベトナム人技能実習生へのフォロー、飲食店でのベトナム人アルバイトの指導、日本にいるベトナム人特定技能者の採用業務も担当しています。
社内に一人でも通訳者がいることで、さまざまな仕事が円滑に進むようです。

④三重県の金属加工・自動車メーカー製造ライン設備製作業D社

D社には10人のベトナム人エンジニアがいます。一軒家を買い取り寮にしたり、通勤用バイクなどを貸し出したりと、ベトナム人エンジニアが働きやすい環境を整えています。

D社が初めてベトナム人エンジニアを採用したのは数年前ですが、そのベトナム人は多能工として電子部品や金属加工など多岐に渡る業務で能力を発揮しました。
その後、さらに2名のベトナム人を増員し、3人は1つのチームとなり、日本人チームに負けないほどの実力を発揮しています。

⑤岐阜県の建設土木業E社

E社は建設の施工管理を行っているため、日本語のコミュニケーション能力が求められます。
1人目のベトナム人エンジニアは、N3レベルを条件に採用しました。そのベトナム人エンジニアは、入国前に1日10時間近く勉強し、N3を取得したそうです。
2人目はN3レベルで入国しましたが、現在N2にチャレンジ中です。

2名ともベトナムで建設系の大学を卒業しています。しかし、日本の建築士などの資格との互換性がないため、日本の国家資格試験を受けなくてはなりません。E社は、N2レベルに達したら、通信で大学の勉強をしてもらい、国家試験を受験してもらおうと考えています。

一方、失敗例もないわけではありません。

例えば愛知県の建築業G社では、ベトナム人エンジニアと入社当初から給与面で意見の食い違いがありました。建築業では朝早く仕事場に行く必要もあり、その早出に対して時間外手当がないのが不満のタネで、結局、在留資格を更新したときに退職したそうです。

また、愛知県の金属加工業H社でも、採用したベトナム人エンジニアが能力不足でした。日本語を勉強する意思も弱く、結局居場所がなくなって退職したそうです。